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広瀬麻梨奈さんと出会った日

2011年3月11日から、9年が過ぎた。
今日の14時46分は、学校が休みの彼と、
車のオイル交換で訪れていたディーラーで迎えた。
テレビで追悼行事がやっていたので、心から黙とうした。

そのかん、9年前を考えたが、悔やんでも悔やみきれない思いより、
広瀬さんと出会ったことがなにより嬉しいことのように思える今がある。

お台場。
撮影が終わり、新入社員だった広瀬さんは、
スーツ姿で馬鹿みたいに重たいごみを上司に言われて
捨てに行っていたところだった。
新入社員は大変だなぁと思ったので、
「広瀬さん、僕がそのごみ捨てとくから。」
といって、とっとと捨てて、東京テレポートのキオスクで買った
スーパードライを飲みながら、電車を待っていた。

そこに、いきなり広瀬さんが
「本多さん!」と声をかけてきた。
「さっきはゴミ出しありがとうございました。」
私服姿の彼女は、新卒で、大きなリングのピアス、
茶色のジャケット、ローライズジーンズ。
「ごめんね、俺撮影終わったあとたまにこれ飲んじゃうのよ。」
と断ったら、「逆に私も飲みたいです笑」と言ってきた。
電車に乗って、目黒に住んでいることを知って、
僕と同じ路線なんだね、じゃあ今度飲みにでも行こうか、
と、一応言っておいた。

その何週間か後、ご飯に行って、彼女が目黒が実家で、
銀行家の家で育ったことを知った。

僕は、当時品川でホテル暮らし。
おそらく8月には東京を去るだろうと考えていたので、
今しかできない暮らし方をした。
結婚は、女性との付き合いの延長に、家同士の関係ができる。
彼女とは、身分も違う。

実際僕は、8月初旬に、品川駅から博多行の新幹線に乗った。
彼女にも、東京の仲間にも、そして、東京にも、もう戻らないと思った。
僕は、塩気を失った塩なのだと思った。

それから半月。彼女が博多駅にやってきた。
僕に会うためだけに。
信じられないと思った。
'博多駅についたよ。’
博多駅に初めて来たという彼女は、
博多口ではなく、筑紫口の模様が付いた煉瓦の前で待っていた。

僕は、すぐに東京に戻る決意をした。
そして、品川区に彼女と住むための家を借りた。
その次の年の3月11日、役所に婚姻届けを持って行った。

今、佐賀に住んで、福岡の街を彼女と息子と歩く。
苦しかった時期も乗り越えて、
美しい日常が続く。

僕にとっての3.11は、もはや悲観や恐怖ではない。
僕を見て欲しい、東北を中心に災害によって何もかも失った人たちへ。
恐怖は、今、全世界が身をもって感じている。
だからこそ、日本人として、苦しみと幸せは表裏一体だと、
僕を見て、少しでも感じてくれたら幸いだ。

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